「最近、食べる量は変わっていないのに太ってきた」
「下半身は細くなったのに、お腹だけが出てきた」
——あさがおパーソナルジムに通いはじめた頃の
40〜50代の女性会員から、本当によく聞く言葉です。

今日はなぜこの時期に起こる現象の「理由」を、
40年間、体の専門家として
患者さんと向き合ってきた立場からお話しします。
「なんで男のあなたに私の体のことがわかるの」
と思ったあなた、その気持ちはよくわかります。
でも最後まで読んでもらえると、
きっと「なるほど」と思ってもらえる内容となっています。
お付き合い下さると嬉しいです。
① 思春期の「逆バージョン」——まず体の仕組みを知ろう

更年期の話をする前に、
少しだけ体の仕組みをお話しさせてください。
難しい話ではありません。
女性は、お母さんのお腹の中にいるころ、
卵巣に600〜700万個もの卵胞を持っています。
これが一生で使う「卵子のストック」です。
生まれた頃には100〜200万個、
初潮を迎える頃には30〜40万個ほどに自然と減っていきます。
そして毎月の生理のたびに、多くの卵胞が成長を試みて、
そのうちの1個だけが排卵し、残りは役割を終えて消えていき、
1回の周期で約1,000個が失われると言われています。
つまり卵胞は、誕生してから増えることはなく、
減っていく一方なのです。
これはとても自然なことで、
思春期を思い出してもらうとわかりやすい。
思春期には卵胞が活発になってエストロゲンが増え、
女性らしい体になり生理が始まりました。
更年期はその逆バージョン。
卵胞のストックが少なくなってきたことで、
エストロゲンがだんだんと少なくなって、
体が次のステージへと移行していくプロセスを迎えます。
「あなたの体が長年にわたって守り続けてきた
大切なサイクルが全うされ
今度は自分のための新しいステージへ」
——そんな風に捉えると、このことも良い変化に感じないでしょうか?
妊娠・出産を経験したかどうかに関わらず、
すべての女性が同じように経験するこの変化は、
暗い話ではなく私は、
女性としての体が誠実に働き続けてきた証だと思うのです。
ただ、この移行期に体が戸惑うのには理由があります。
脳(視床下部・下垂体)は、卵胞が減ってきても
エストロゲンをもっと出して」と指令を出し続けます。
でも卵巣はそれに十分に応えられない。
いわば「脳が指令を出しているのに、体が反応できない状態」です。
このすれ違いが、ホットフラッシュや
発汗、気分の浮き沈みといった更年期症状として現れます。
これは一時的な適応期間です。
体は時間をかけて、少しずつ新しいバランスを見つけて
ソフトランディングしようとします。
長く苦しむ方もおられますし、ほとんど症状を感じない方もいる。
十人十色ですが、体が懸命に新しい自分を作ろうとしている
ことは誰にとってもプロセスとして同じだ、
ということをぜひ知っておいてほしいです。
② なぜ「お腹だけ」太るのか——エストロゲンと脂肪分布の変化

ここで一つ、現場でよく聞く声をご紹介します。
50代半ばで運動を始めたある女性会員さんのことです。
「空気を吸っても太る」とおっしゃっていたほど、
食べる量は変わっていないのに
お腹周りだけがどんどん大きくなっていったそうです。
閉経を迎え、更年期の症状もひどく、
ホットフラッシュや大量の汗はもちろんのこと、
年頃の娘さんとことあるごとにぶつかることも、
イライラ、ストレスに拍車をかけていました。
「なぜお腹だけ太るのか」
——実はこれ、エストロゲンの減少と深い関係があります。
閉経前の女性の体では、
エストロゲンが内臓脂肪の蓄積を抑える働きをしていました。
だから若いころは、脂肪がお尻や太ももなど
下半身の皮下脂肪として蓄えられやすかったのです。
ところがエストロゲンが減少すると、
いわゆる「内臓脂肪を調整する番人」がいなくなります。
結果として、お腹周りに内臓脂肪がつきやすくなり、
ウエストのくびれが失われていくのです。
私が40年間、現場で患者さんを診てきて感じることがあります。
高齢になるほどウエストのくびれがなくなり、
下半身の筋肉が落ちて寸胴体型になっていく。
——これはごく自然な加齢の流れですが、
更年期以降にそれが加速するのはこのメカニズムが背景にあります。
だからこそ、私は会員さんに口酸っぱく伝えています。
「しんどくても、下半身のトレーニングだけは続けましょうね」と。
下半身の大きな筋肉を動かすことが、
脂肪を燃やす体を維持するための、
最も効果的な手段だからです。
この理由については次の章でさらに詳しくお話しします。
③ 「食べていないのに太る」その正体——筋肉と基礎代謝低下

「食べる量は変わっていないのに、なぜか太っていく」
——これは更年期世代の女性から最もよく聞く悩みの一つです。
嗜好の変化や、食べ過ぎも一因ですが、
もっと重要な原因は、筋肉量の低下にあります。
実はエストロゲンは、脂肪の分布だけでなく、
筋肉の維持にも深く関わっています。
エストロゲンが減少すると、筋肉量が落ちやすくなる。
筋肉はエネルギーを消費する体の主力エンジンです。
このエンジンが小さくなれば、
安静にしているだけで消費されるカロリー
——つまり基礎代謝——が下がります。
結果として、以前と同じ食事量でも太りやすい体になっていくのです。
加齢だけでも、筋肉量は20代をピークに少しずつ減っていきます。
運動をしない場合、年間およそ1%ずつ失われると言われています。
更年期はそこにエストロゲン低下が重なり、
この筋肉の減少がさらに加速します。
前章でご紹介した会員さんも、まさにこの状態でした。
食事量は変わっていないのに体型が変わっていく。
それは体のエンジンそのものが小さくなっていたからです。
ここで一つ、大切なことをお伝えしたいのです。
筋肉量の低下と体脂肪の増加が同時に進む状態を
「サルコペニア肥満」と呼びます。
体重の数字は大きく変わっていなくても、
筋肉が脂肪に置き換わっているケースも少なくありません。
「体重は変わっていないのに体型が崩れた」
という方は、まさにこの状態かもしれません。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→No.2「サルコペニア肥満」記事】
逆に言えば、筋肉を守ることができれば、
基礎代謝の低下を防ぎ、
太りにくい体を維持することができます。
更年期だからといって、諦める必要はまったくありません。
次章以降で、その具体的な方法をお伝えします。
④ 食欲が止まらなくなる理由——脳と食欲への影響

「最近、甘いものが無性に食べたくなる」
「以前はそれほど好きではなかったのに、
食の好みが変わった気がする」
——更年期世代の女性からよく聞く声です。
実はエストロゲンには、脳の満腹中枢に働きかけて
食欲を抑える作用があります。
エストロゲンが減少すると、
この食欲抑える「ブレーキ」が弱くなり、
無意識のうちに食べる量が増えやすくなるのです。
「なんとなく口寂しい」「食べていないはずなのに」
という感覚の裏には、こうした体の変化が隠れています。
さらに、更年期症状として現れる睡眠の乱れが、
これに追い打ちをかけます。
睡眠不足になると、食欲を増進させるホルモン(グレリン)が増え、
逆に食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減ることがわかっています。
眠れない夜が続くほど、翌日に甘いものを欲しやすくなる
そんな経験したことないですか?
——これ、実は体の自然な反応なのです。
そしてもう一つ、見落とされがちな要因があります。
ホットフラッシュや疲労感、気分の浮き沈みといった更年期症状は、
日常の活動量を知らず知らずのうちに減らします。
「なんとなくしんどい」「今日は外に出たくない」
——そんな心身の落ち込みが日頃の活動を妨げ、
消費カロリーを下げ、
食欲の増加と相まって体重増加につながっていきます。
前章でご紹介した会員さんが「空気を吸っても太る」
とおっしゃっていたのは、
まさにこれらが重なった状態だったのだと思います。
食欲のブレーキが弱まり、睡眠の質が落ち、活動量も下がる。
一つひとつは小さな変化でも、
重なることで体への影響は決して小さくありません。
なお、インスリンの働きが鈍くなることも
更年期との関連が指摘されています。
血糖値や代謝が悪いと指摘された場合は、
内科や婦人科への相談をお勧めすることもあります。
⑤ 対策は「筋トレ・食事・睡眠」の三本柱——でも最初の一歩は?

ここまで読んでいただいて、
「では具体的に何をすればいいの?」
と思っている方も多いと思います。
答えはシンプルです。
筋力トレーニング・食事・睡眠の三本柱です。
ただし、順番があります。
まず最初に取り組むべきは、筋力トレーニングです。
②章③章でお伝えしたように、
更年期以降の体型変化と基礎代謝の低下は、
筋肉量の減少が根本にあります。
つまり筋肉を守り、強化することが、
すべての対策の土台になります。
特に下半身——お尻、太もも、ふくらはぎ
といった大きな筋肉群を動かすトレーニングが最優先です。
下半身の筋肉は体全体の筋肉量の約70%を占めています。
ここを鍛えることが、基礎代謝の維持に直結します。
食事については、タンパク質を意識して摂ることが重要です。
筋肉の材料はタンパク質です。
トレーニングをしていても、
材料が不足していては筋肉は維持できません。
「食べる量を減らせば痩せる」という発想は、
更年期以降の体には逆効果になることもあるためこの際忘れて下さい。
量よりも質——何を食べるかを意識する段階に入っています。
睡眠については、④章でお伝えした通り、
食欲ホルモンのバランスに直結します。
完璧な睡眠でなくてもよいので、
寝る前のスマホを控える、
室温を整える、部屋を真っ暗にする、
といった小さな習慣から始めてみてください。
そして、あさがおパーソナルジムで
特におすすめしているのがVRC加圧トレーニングです。
VRC加圧トレーニングは、
腕や脚のつけ根に専用のベルトを巻いて
血流を適度に制限しながら行う筋力トレーニングです。
通常の高負荷トレーニングと同等以上の成長ホルモン分泌が、
軽い負荷でも得られることが研究で報告されています。
成長ホルモンは筋肉の合成や脂肪の分解を促す働きがあり、
年齢とともにその分泌量は減少します。
加圧トレーニングはその分泌を効率よく促せる点で、
更年期以降の女性に特に適していると考えています。
詳しくはこちらをご覧ください。
→【VRC加圧トレーニング紹介ページ】
冒頭でご紹介した会員さんの話に戻ります。
運動を始めて半年ほど経ったころ、
その方から嬉しい報告をいただきました。
「最近、娘と仲良くできているんです」と。
理由を聞くと、「イライラしなくなったので、
娘に当たらなくなった」とのこと。
娘の反抗期が終わったわけではなく、
自分の体?心?が変わったのだとか。
「ぶつかっていたのは娘のせいではなく、
自分のイライラが家族に伝わっていたからだと気づきました」
——そう話してくださったときの表情が、今でも忘れられません。
筋トレの効果は、体型だけではありません。
体力がつくと、小さなことが気にならなくなります。
気持ちに余裕が生まれ、周りへの接し方が変わる。
これは多くの会員さんが口をそろえて言うことでもあります。
もちろん症状が強い場合は、
婦人科へのご相談をおすすめしていますし、
必要であれば、当ジムから信頼できる専門医を
ご紹介することも可能です。遠慮なくお声がけください。
また、当ジムには女性トレーナーも在籍しています。
体のことや更年期の悩みを、
同性に相談したいという方もどうか気兼ねなくご相談ください。
⑥ 新しいステージの自分を、楽しもう

更年期は、終わりではありません。
卵胞のストックが少なくなり、
エストロゲンが揺らぎながら低下していく
——それは確かに体にとって大きな変化です。
でもそれは、女性としての体が
長年にわたって誠実に働き続けてきた、その証でもあります。
①章ではその「仕組み」をお伝えしました。
ここでお伝えしたいのは、その先のことです。
この変化を正しく理解して、
筋トレ・食事・睡眠を味方につければ、
50代・60代はむしろ「自分のための時間」として、
これまでとは違う充実した毎日を迎えることができます。
冒頭の会員さんがそうであったように、
体が変わると、気持ちが変わります。
気持ちが変わると、
周りとの関係性にも変化が起こった一例です。
最後に一つ、余談を。
「男性のあなたに何がわかるのよ」
と思いながらここまで読んでくださった方、
ありがとうございました。
実は男性にも更年期があります。
テストステロンというホルモンが低下することで、
疲労感・気力の低下・気分の落ち込み
といった症状が現れます。
旦那さん、最近元気ないなぁ。
そんなことがあったら少し優しく接してあげて下さい。
それだけでもエネルギーチャージされたりしますから。笑
とにかく、他人事ではないからこそ、
私はこのテーマを真剣に調べ、勉強してきました。
医学の理論は常に進化していますので、
これからも学び続けます。
男性の更年期については、
またいつか記事にするかもしれませんので、
その時には再び読んでもらえると嬉しいです。
あなたは一人じゃありません。
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