ゼロカロリーは、本当にカロリーゼロなのでしょうか。もしゼロなら、いくら食べても、いくら飲んでも、体には何の変化も影響もないはずです。それは本当でしょうか。
カロリーゼロの広告を信じていた人にとっては、ひとつショックな話かもしれませんが、実は複数の研究によって、その「ゼロ」が体の中では決してゼロではないことが分かってきています。
お腹の中には、無数の細菌が住んでいます。いわゆる「腸内フローラ」です。この細菌たちは、私たちが食べたものを分解し、体に必要な物質を作ったり、逆に不要なものを作ったりしている、いわば体の中の小さな「発酵工場」のような存在です。
ある実験では、人工甘味料をマウスに与え続けたところ、この「発酵工場」の中身(細菌の種類やバランス)がすっかり変わってしまいました。そして、そのマウスは血糖値が上がりやすく、下がりにくい体質に変わっていったのです。出典:イスラエル・ワイツマン研究所の研究チームによるNature誌掲載論文
ここからが驚くところです。研究者は、その「変化した腸内細菌」だけを取り出し、人工甘味料を一度も口にしたことのない別のマウスのお腹に移してみました。すると、そのマウスまで、まるで自分が人工甘味料を摂ってきたかのように、血糖値が上がりやすい体質になってしまったのです。
つまり、人工甘味料そのものではなく、それによって「変化してしまった腸内細菌」が、体質そのものを変えてしまう力を持っている、ということです。カロリーがゼロでも、お腹の中では確実に体質そのものを変えてしまう何かが起きているのです。
私自身、ガチのマラソンランナーだった頃、1日最低10キロ、週末の走り込みを含めると月間450キロ以上を走り込む生活を送っていました。練習を終えてシャワーを浴びた後、ペットボトル1本のコーラを飲み干すのが毎日の習慣でした。味がどうこうというより、あのシュワシュワとした喉ごしが、頑張った自分へのご褒美のようなものだったのです。
しかしその頃の約10年間、私は「走らないとお通じが来ない」という体質になっていました。泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロのように、走り続けなければ用を足せない。朝は自宅のトイレではなく、練習コース脇にある公衆トイレで用を足すのが当たり前の生活でした。この体質には、レースのたびに苦労させられました。走っている最中に急に便意を感じ、タイムロスを覚悟でトイレを探す。その間ずっと冷や汗ダラダラで気が気ではありませんでした。
後になって分かったことですが、私が毎日飲んでいたコーラに使われていた人工甘味料が、腸内細菌に影響を与え、「走らなければ用を足せない」という体質そのものを作り上げていたのです。そのことに気づくまで、走った後にコーラを飲む習慣がなくなることはありませんでした。
甘味を感じるだけで、体は動き出す

もう一つ、知っておいていただきたいことがあります。「甘い」と感じるセンサーは、舌の上だけにあるわけではありません。実は、膵臓やお腹の中(小腸)にも、同じセンサーが備わっていることが分かっています。出典:東京大学大学院農学生命科学研究科の研究発表
このセンサーが「甘さ」を感知すると、体は「砂糖が来た」と勘違いして、糖を処理するための準備を先に始めてしまいます。具体的には、血糖値を下げるホルモンである「インスリン」を、実際には砂糖が入ってきていないのに、先に出し始めてしまうのです。
たとえるなら、お客さまの気配だけを感じて、まだ誰も来ていないのに玄関を開けてお茶の準備を始めてしまうようなものです。血液検査で測る血糖値の数字そのものは、大きくは動きません。しかし体の中では、「甘い」と感じた瞬間から、確かに何かが動き出しているのです。これもまた、人工甘味料は「ゼロカロリーだから体には何も起きていない」とは言い切れない理由の一つです。
なぜ「安全」という情報ばかり目にするのか

ここまでお伝えしてきたような研究がある一方で、世の中には「人工甘味料は安全」「問題ない」という情報の方が、圧倒的に多く目に入ります。これには理由があります。
人工甘味料を作っている会社が、自ら研究機関や大学に費用を出して行った研究や、それをもとにしたレビュー記事は、そうでない研究に比べて「安全」「問題ない」という結果になりやすい、ということが分かっているのです。…ということが分かっているのです(出典:シドニー大学・ラマツィーニ研究所の系統的レビュー(PLOS ONE掲載))。誰しも、自社の商品にとって都合の悪いデータを、大きな声で発表したいとは思わないものです。これは特別なことではなく、お菓子屋さんが「うちのお菓子は体に悪い」とは宣伝しないのと、根っこは同じです。
一方、世界保健機関(WHO)は2023年、体重管理や生活習慣病の予防のために人工甘味料を使うことを勧めない、という見解を発表しました(出典:世界保健機関(WHO)の公式発表)。こちらは特定の企業から一切お金をもらっていない、公衆衛生の立場からの判断です。
「多くの研究が安全だと言っている」という言葉を目にしたときは、その「多く」を誰が調べ、誰がお金を出したのかにも、少しだけ目を向けてみてください。それだけで、情報の見え方は変わってきます。
今日から見直せること

「ゼロカロリーだから安心」ではなく、「体は甘みに正直に反応している」ということを知っているだけで、日々の選び方は変わってきます。かつての私は、そのことを知らないまま、10年もの間、走ることでしか用を足せない体質と付き合い続けていました。今なら分かります。あの頃必要だったのは、もっと走り込むことではなく、シャワー後の一本のコーラを見直すことだったのだと。同じような「ゼロカロリーへの過信」は、施術の現場でも他の方に見受けることがあります。
ゼロカロリーという言葉を無条件に受け入れてしまうのではなく、これからは少しだけ立ち止まって考えてみてください。自分の体は自分で守る思考を身につけることこそが、病気予防につながります。
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監修
あさがおパーソナルジム / あさがお整体院
国家資格・柔道整復師×パーソナルトレーナー 加藤秀之
下高井戸駅から徒歩1分の場所で、地域とともに28年。 前職から数えて40年間、延べ15万件以上の施術・運動指導を行ってきました。
柔道整復師として、膝・腰・肩などの運動器疾患に長年向き合い、 痛みの改善から再発予防まで一貫したサポートを行っています。 その中で強く感じているのは、 「痛みを取るだけでは根本的な解決にはならない」ということです。
現在は、整体によって身体を整えた上で、 「一生歩ける体を作る」ための運動指導に力を入れています。
自身もアスリートとして身体の痛みを経験し克服したことから、 同じ悩みを持つ方に寄り添いながら、 再発しない身体づくりも積極的にサポートしています。
FAQ|人工甘味料とゼロカロリーについてよくある質問
- 人工甘味料は絶対に避けるべきですか?
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絶対に避けるべきというわけではありません。たまに口にする程度であれば、過度に心配する必要はないでしょう。問題になりやすいのは、毎日の習慣として長期間・大量に摂り続けるケースです。「ゼロカロリーだから」と無制限に摂取することは避け、水やお茶など「甘みのない選択肢」を軸にしていくことをおすすめします。
- ゼロカロリーの飲み物を飲むと、血糖値の数値は上がりますか?
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一回だけの摂取であれば、血液検査で測る血糖値の数値そのものが大きく動くことは多くありません。ただし、甘みを感じた時点で体はインスリンの分泌準備を始めており、習慣的に摂り続けることで腸内環境が変化し、血糖コントロールに影響が出る可能性が研究で報告されています。「数値が動かない=体に何も起きていない」ではない、という点が重要です。
- ステビアなどの天然甘味料なら安心ですか?
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天然由来だからといって、体への作用がすべて解明されているわけではありません。甘みを感じるセンサーは、天然か人工かを区別せずに反応するため、同じように体が「糖が来た」と勘違いする可能性があります。「天然だから無条件に安心」と考えるのではなく、甘味料全般との付き合い方として捉えることをおすすめします。



